ミシュランが展開する海運部門の脱炭素ソリューションWISAMO (ウィザモ) とフランス海事当局
次世代帆船プロジェクトで初の商業契約を締結
- ウィザモは、フランス政府海事・漁業・養殖総局と低環境負荷の新型巡視船装備に関する初の商業契約に調印し、その開発において大きな節目を迎える
- ウィザモ、 Socarenam 造船所、そしてMauric 海軍設計事務所が、100%フランス企業による共同事業に向けて力を結集
- 革新に向けたミシュランのリーダーシップの新たな実証例に
写真提供:Romain SOSSO - Explore Studio
ミシュランは、海運輸送の脱炭素化を目指す次世代帆船プロジェクトWISAMO(Wind Sail Mobility、以下「ウィザモ」)を開発してきましたが、フランスの海上保安を担当する DGAMPA(海事・漁業・養殖総局)に採用される極めて重要な節目を迎えました。
今回の採用にあたりDGAMPAは、ミシュランと北フランスの造船所 Socarenam を選定し、ハイブリッドと風力推進を組み合わせた革新的な海上巡視船の設計・建造・装備に取り組みます。
「メイド・イン・フランス」の共同事業
今回の新型巡視船プロジェクトは、フランス企業3社による共同事業であり、約40年前に設計された哨戒艇(しょうかいてい)イリス号 (Iris) 号の後継船建造を目的としています。このプロジェクトでは、海軍のメインの設計事務所である Mauric社が設計を担当、Socarenam造船所が建造を実施し、ミシュランは革新的なウィザモ風力推進技術を搭載する役割を請け負います。
ウィザモで使用される自動伸縮式の帆は、表面積 170平方メートル(1,829平方フィート)で、ディーゼルと電力を併用するハイブリッド動力システムを補完する形で、風力による補助推進力をプラスします。その結果、新型船では設計および運航全般の最適化を実現し、約15%の省エネ効果が見込まれています。こうしたユニークな特徴により、船舶の運航や有事の介入能力を制限することなく、環境性能の面でDGMPAの期待に応えることが可能となります。
ミシュランのウィザモは、2025年に計画されている船舶の初期設計開発段階から、当該の設計事務所や造船所と連携します。また、2027年初頭に予定されている船上設置においても、設備の完全な引き渡しまでサポートします。さらにミシュランのチームは、同年末に見込まれている海上試運転にも立ち会い予定です。
ウィザモの野心的な開発計画の重要なマイルストーン
この次世代型巡視船へのウィザモ導入は、同ソリューションが誇る技術的な選択を正当化するものになります。その利便性と完全格納可能なデザインは、スイスアーミーナイフのように風力推進における真の「万能ツール」といえます。
ウィザモは今後数年間で、大型船(18メートルから60メートルの大型プレジャーボートや作業船、貨物船)を含むあらゆるタイプの船舶の脱炭素化をサポートする幅広い帆船システム開発を目指しています。
ポリマー複合材料ソリューション事業部ディレクター及びミシュラングループ経営評議会メンバーである Maude Portigliatti は次のように述べています。
「海運部門の脱炭素化支援を目的としたミシュランのソリューションであるウィザモの開発において、最初の船舶への搭載は極めて重要な前進を意味します。今回の契約は、当社の技術的選択の正当性およびソリューションの堅牢性を証明するだけでなく、ミシュランのパイオニア精神を強化するものです」。
写真提供:Romain SOSSO - Explore Studio
ウィザモ、あらゆるタイプの船舶に応用できる革新的なソリューション
ウィザモは、進化し続ける今日の海事環境に対応する革新的かつ実用的なソリューションを提供します。このシステムは、風がもたらしてくれる予測可能なエネルギーを利用し、低コストにて船舶の推進を可能とする自動伸縮式の帆で構成されています。また、直感的かつ自動化された制御システムと簡素化されたインターフェースを備え、船舶ソリューションを統合する上での問題点を大幅に軽減します。ミシュランのウィザモが開発した帆は、15メートルから20メートル級以上の幅広い船舶に適応し、主推進システムとして、またはエンジン動力を補完する追加エネルギーを提供するハイブリッド構成で使用できます。
ウィザモは、以下の通り3つの主要要素に基づくシステムを導入し、風力推進による燃料消費の削減を可能にしています:
- 必要に応じて展開・格納を可能にする、完全自立・自動伸縮式の帆。
- 低圧で膨張可能かつ左右対称の帆形を形成する耐久性に優れた軽量生地素材。
- 帆に関連する全機能 (帆の上げ下げ、調整、操縦、リーフィング、帆の保護を目的として環境条件に応じて格納) を管理する完全自動化されたコントロールシステムにより、乗組員の負担を軽減。
船舶について
この新型巡視船は、排他的経済水域 (EEZ) 内の海上監視を担当し、あらゆる規模の船舶を監視し、フランス政府の海事活動を支援します。 同巡視船は、漁業の監視と規制執行にとどまらず、航行監視、海洋汚染防止、環境法執行、捜索救助活動も担うことになります。この船舶は、ラ・ロシェルを拠点に、大西洋沿岸、特にビスケー湾で運用される予定です。なおウィザモ (WISAMO) は、当地で2023年に貨物船 MN Pelican号を使用した数ヶ月にわたるシステム耐久性試験を行い、無事成功を収めました。
【ミシュラン、130年以上にわたりイノベーションを牽引】
ポリマー開発、プロセス工学、ハイテク素材の専門技術、データ活用、その他の多岐にわたる分野で、ミシュラングループは創業以来、イノベーションを優先事項の中核に据えてきました。これを継続的に実行するために、研究開発部門に多くを依存してきました。ミシュラングループは、世界中に6,000人以上の研究者を擁し、年間12億ユーロのイノベーション予算そして11,000件の有効特許を誇ります。これらを基にして、モビリティの向上や変化する生活の改善を目指し、あらゆるソリューションを継続的に開発しています。